おはようございます。
許認可申請と福祉の専門家、平松智実法務事務所の平松智実です。
今回のテーマは「成年後見制度の理念と知的障害のある方の後見人となるのはどのような人が望ましいか」についてです。私自身、行政書士事務所を開所する前は知的障害者支援施設で約10年間勤務し、重度の知的障害の方の支援や介護をしていました。その頃の経験も踏まえてお話していきたいと思います。
まず、成年後見制度の理念についてです。
1.自己決定権の尊重
自分のことを自分で決めることを尊重します。
2.残存能力の活用
今ある能力を活かして活動ができるように支援をすることです。
3.ノーマライゼーション
障害のある方でも普通に生活ができるように配慮することです。
つまり、後見人は成年後見制度の利用者が自分で決めたことを尊重し、自分でできることは自分でやってもらうように配慮しながら普通の生活ができるように支援をしていくということになります。しかし、言葉にするのは簡単ですが、これはとても難しいことです。
知的障害のある方、特に重度の知的障害の方の後見人としてもっとも難しいのは意思決定権の尊重です。なぜならご本人が話をすることができない、意思表示をできないというケースが少なくないからです。意思表示ができなければ自分のことを自分で決めるのを尊重するという以前の問題となってしまいます。
「意思表示がないから尊重のしようがない」といってしまえば簡単です。しかし、このような重度の知的障害のある方の後見人となる人は意思表示のできない方からご本人の意思をくみ取る技術、周囲からの客観的な情報を根拠にご本人の意思を推測する力が必要となります。
認知症の方であれば自分で話をすることができる方も多いでしょうし過去の趣味や嗜好、行動などから今の意思を推測することができます。しかし、知的障害の方の場合は先天的であることが多いため、このような判断材料が少ないことケースが圧倒的に多いと言えます。
そのため、今のご本人のちょっとした変化や日々の生活の記録などから、できるだけ正確に推測することやご本にに対するアプローチの幅の多さなどが重要です。
例えば「何が食べたいですか?」と聞いて答えがなかったらジェスチャーにする、それでも反応がなければメニューを見せて指をさしてもらう、メニューをわかりやすいよう1品ずつカードにする、指をささなければ目の動きを確認するというざっと思いつくだけでも多くの方法があります。
それでもわからなければ何を食べたときに笑顔が多いか、食べるのが早いか、何を残すことが多いかなどに注目して記録を残し、ご本人の意思を推測する材料にするという方策を採ることも考えられます。
これらはあくまでも、知的障害のある方の意思を確認する、引き出すために様々なアプローチの方法があるという例です。まずこのような発想があるかどうか、そしてそれを実行に移せるかどうかということも後見人を選ぶ際に重要な判断基準ではないかと思います。
成年後見制度を申し立てるときに後見人の候補者を指定しなくても家庭裁判所がかならず誰かを後見人として選任します。しかし、申し立てをする前に例えば上記のような観点からそれぞれの人に合った後見人候補者を探す、どのような人が適任かを考えることはとても大事です。
知的障害のある方が成年後見制度は一生のパートナーとなる後見人を決めるというとても重要な手続きです。成年後見制度がどのようなものかをまず知ったうえで、成年後見制度の理念に沿って支援をしてくれる後見人を探すということが必要になります。
平松智実法務事務所では知的障害のある方の成年後見制度の利用についてのご相談を承っております。成年後見制度の利用を検討されていましたらぜひ一度ご連絡ください。
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